太閤街道殺人事件
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11月も1週間が過ぎ、大阪も本格的な秋を迎えた。
   
阿倍野の自宅を出発した岩田は、三重県の松阪市を目指した。

助手席には女性がいた。
  
Qnewニュースの記者・三条坂圭子である。昨晩、事件の真相を聞かせて欲しいと彼女から電話があった。「2、3日後なら」と答えたが…。

今朝、自宅にやってきた。木下藤吉郎が知事選を取り辞めたため、担当記者はヒマであった。
  
結局、一緒に行くことになり、車内で記者から質問攻めにあった。
  
「さすが、ツアー添乗員ですね」
   
ツアー添乗員の小林優香は『カラス飛ぶ 三ツ雲の空 ああうれし』の意味を即座に解いた。

「カラスは香良洲町(からすちょう)。三ツ雲は三雲町。うれしは嬉野町では…」
   
有馬温泉で再会したとき、そう教えてくれた。

「香良洲町、三雲町、嬉野町は三重県の中部に存在していました」

「合併したため、現在はもう存在していません。香良洲町は津市に、三雲町と嬉野町は松阪市になっています」
     
平成の大合併で、市町村としての町は消えた。ただ、地名としては残っている。

「なるほど。でも、よく…」

「名古屋の旅行会社にとって、伊勢志摩へのバスツアーは稼ぎ頭なんです」
  
「お伊勢参りツアーを数え切れない程、担当しました。だから、この辺りの地理は」
      
伊勢志摩への道中に、津市や松阪市が存在する。
  
飛ぶは離れているということ。『カラス飛ぶ』は香良洲から離れている。

空は空っぽ。無いということ。『三ツ雲の空』は三雲では無い。

『ああうれし』は、ああ嬉野。
      
香良洲町から離れている、三雲町と嬉野町の境界。三雲では無い、嬉野側の地点。
      
地図では松阪市嬉野黒野町。松坂牛の牧場のほか、寺と神社が建っている静かな田園地区である。
      
(場所を表わしているとしたら、何?)
     
(絵の隠し場所!)
  
絵は立石浩一が持ち去った可能性が高い。だが、彼の部屋には絵は無かった。

(隠した)

この場所に知り合いはいない。そうなると、公園や寺、神社など公共的な場所に絵を隠した可能性が高い。

 
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風景
伊勢市の夫婦岩:©三重フォトギャラリー
風景
英虞湾(あごわん):©三重フォトギャラリー
風景
大王埼灯台::©三重フォトギャラリー
    Qnewニュースプレゼンツ