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笹子トンネル崩落事故、調査報告

2013年6月18日、トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会が、笹子トンネル事故について、調査報告書を発表。

トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会は、昨年12月に発生したトンネル天井板の落下事故を受けて、原因究明や再発防止策を検討するため、国土交通省に設置された委員会。
     
調査・検討委員会は、事故原因について、トンネル天井板を吊り下げていた接着系ボルトの「設計の問題」、「製品の問題」、「施工の問題」、「点検の問題」の複合要因としました。

再発防止策として、トンネル天井板を撤去するのが望ましいとし、今後は「接着系ボルト」の使用を避けるべきとの結論を出しました。

【笹子トンネル事故の調査報告】
■事故発生要因
事故は、以下の4つの要因が複数作用し、累積された結果、致命的な事故に至ったと考えられる。
     
1、設計に係わる問題
天頂部「接着系ボルト」に生ずる引張力は、設計で見込まれた引張力を超えていたと考えられる。
また、各ボルトが負担する引張力に、ばらつきがあったと考えられる。

2、製品に係わる事項
接着系ボルトの建設当時の製品カタログでは、施工仕様、品質管理規定の記載が明確でなかった。
また、当時のカタログには「変質、老化の心配はない」と記載されていた。
     
しかし、長期耐久性に関する知見としては、35年を超えたのちの接着剤引抜強度の試験結果は日本では無い。

3、施工に係わる事項
特記仕様書、設計報告書及び完成図における接着系ボルト孔の削孔深さやボルト埋込み長の記載について、矛盾点があった。
        
また、実際に、ボルト孔の削孔深さとボルトの埋込み長が異なっているものが、相当数存在することを確認した。
      
つまり、建設当初から、所定の接着剤引抜強度が得られていないものが、一定程度存在したものと考えられる。

4、点検に係わる事項
中日本高速の笹子トンネル天井板に対する、事故前の点検内容や維持管理体制は不十分であったと言わざるを得ない。
    
12年間にわたり、L断面天頂部ボルトに対して、ボルトに近接しての目視及び打音が未実施であった。
補修補強履歴の保存体制に、不備があった。

■再発防止策
接着系ボルトに対して、近接点検(近接目視、打音及び触診)を行うことは有効。
しかし、接着系ボルトは、完成後には打設状態の把握が困難であることなど、技術的な限界も確認された。

以上から「既設のトンネル天井板」に対しては、換気方式の変更の可否などを考慮し、撤去することが望ましい。
     
存置する場合は、接着系ボルトが負担できなくなった場合に、当該部材が落下しないようにバックアップする。

■今後の接着系ボルトの使用
接着剤樹脂については、疲労等の長期耐久性について、十分な知見があるとは言えない。
       
このため、トンネル天井板、ジェットファン、道路標識等を固定する吊り構造等の常時引張り力を受ける箇所へは、原則として、接着系ボルトの使用を避けるべきである。

【笹子トンネル事故】
2012年12月2日8時頃、中央自動車道の笹子(ささご)トンネル(上り線)で、天井板が140mにわたり崩落した事故。
     
笹子トンネルは、山梨県大月市と甲州市の間にある、中央自動車道のトンネル。
上下線が別々のトンネルとなっており、下りは4717m、上りは4784mのトンネルです。
    
2012年12月2日8時頃、笹子トンネル(上り線)の天井板が140mにわたり、崩落しました。
天井板はコンクリート製で、1枚の大きさは5×2mで、重さは約1トン。
    
トンネルの天井から、鉄製の棒で吊り下げていました。
通行中の3台の車が、崩落した天井板の下敷きとなり、9名が死亡しました。
   
この事故を受け、国土交通省内に「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会」が設置されました。
     
2013年6月18日、調査・検討委員会は、接着系ボルトの「設計の問題」、「製品の問題」、「施工の問題」、「点検の問題」の複合要因により、致命的な事故に至ったと判断しました。
 
また、防止策として、トンネル天井板を撤去するのが望ましいとし、今後は「接着系ボルト」の使用を避けるべき、との結論を発表しました。
ニュースINDEX.2013年6月下旬
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『事故』
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