「そのあと、バイクで有馬の街を捜し回った」
「ロープウェイ駅の前にある駐車場で、俺をハメた女とばったり!」
「女も車で逃げ出した。追いかけたけど、結局、逃げられてしまった」
木下一樹の話が終った。
ロープウェイ駅の前にある駐車場から、南に200m行くと、和田かつ也の殺害現場である鼓ヶ滝公園であった。
「女と出くわしたのは、何時頃?」
「7時過ぎ」
「そのあと、どうした?」
「あきらめて、家に帰った」
「間違いないかい?」
木下一樹は、返事の代わりにうなずいた。
「どうして今日、ここに?」
「俺をハメた女と、ユスってきた男を捜していた。昨日、仲間の一人が女を北新地で見かけた。あとを付けたら、ここのマンションに」
「今日、俺がマンションの玄関で張っていたら、あの女が出てきた。詰め寄ったところで…」
木下一樹の視線が、岩田の顔に。そして、一樹がアゴを少し突きだした。
そのとき、岩田が現れた。
「有馬温泉で、誰か知っている人を見なかった?」
岩田の質問に、木下一樹がクビを横に振った。
あとのことは警察に任すよう言い聞かせ、木下一樹と別れた。
木下一樹は、和田かつ也が殺害されたことも知らなかった。そして、最後まで岩田を刑事だと勘違いしていた。
岩田は再び、高層マンションに訪れ、カレンを呼び出したが、応答はなかった。
携帯電話で、畠山警部補に連絡を取った。
和田かつ也とカレンが、木下一樹をハメた。木下一樹の逮捕がユスリのネタ。そう伝えた。
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