太閤街道殺人事件
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翌朝、岩田は絵の捜索のため、車で有馬温泉へ向かった。

阪神高速・池田線から中国自動車道に乗り、西宮山口ジャンクションで阪神高速・北神戸線に乗り換えた。
 
有馬口で高速を降り、東へ3キロ走ると、有馬温泉に到着した。

有馬温泉は、太閤秀吉のお気に入りの場所である。湯治に訪れただけでなく、川の改修など、温泉地の整備も行なった。
  
その功績により、現在、太閤の名が付いた通りや橋が存在し、太閤秀吉の銅像まで建っている。

太閤街道ツアーが訪れるのは、当然と言えば当然である。
 
岩田はツアーが利用したホテルへ向かった。

ホテルで、フロント係の渡辺宏から話を聞いた。彼が和田かつ也から鍵を預かったのである。

(聞いていたとおり、ホテルに問題は無い。鼓ヶ滝公園へ行こう)
      
有馬温泉の中心街を迂回するルートで、殺害現場の鼓ヶ滝公園へ向かった。

公園は、滝川という小さな川に沿った場所にある。そして、公園の一番奥に名前の由来となった鼓ヶ滝がある。
      
(ここのようだな。夜になると人気がない場所のようだ)
   
殺害現場はすぐにわかった。立入禁止・兵庫県警と書かれたテープが張られていた。

近くにあるロープウェーの最終便は午後6時10分過ぎ。秋の午後6時半以降に、公園を訪れる観光客はほとんどいない。
     
もっとも、紅葉が見頃となったときは、話が変わる。
    
ツアーが有馬温泉を訪れたのは10月下旬。紅葉には少し早い。
      
有馬温泉の紅葉は、11月上旬に始まり、11月中旬にピークを迎えることが多い。
   
鼓ヶ滝公園も紅葉名所であるが、有馬温泉といえば、瑞宝寺公園が有名である。
   
瑞宝寺公園は、有馬温泉の南東部にある神戸市の公園。紅葉の発色がすばらしい名所である。
     
元々、ここには瑞宝寺という寺院があり、太閤秀吉も度々ここを訪れ、茶会を催すとともに紅葉狩りを行なった。
 
瑞宝寺は明治時代に廃寺となったが、山門と太閤秀吉が愛用した石の碁盤は残されている。
 
現在も2千5百本のカエデが赤く色づき、毎年11月初めに太閤時代を偲び、有馬大茶会が開催されている。
 
太閤街道ツアーが11月に行われた場合、間違いなくツアーに組み込まれていた場所である。
     
(駐車場か)
鼓ヶ滝公園内を歩きながら、岩田はそう思った。

ロープウェー駅の前に広い駐車場がある。車で来た場合、鼓ヶ滝公園は便利な場所である。

(和田かつ也は、車でくる人物と待ち合わせていた?)
      
(相手はカレン?)
   
(木下一樹は駐車場でカレンとばったり、そう話した。カレンは和田かつ也が殺害された時間帯に、犯行現場近くにいた)

(カレンと和田かつ也は、どういう関係?)

(2人で木下一樹をハメた。つまり、共犯者である。カレンにとって和田かつ也は、クラブの先輩・柿元順子の男)

ポケットから携帯電話を取り出した。画面のアンテナは3本立っていた。

(鼓ヶ滝公園は六甲山の登山口にあたり、山の中と言っていい場所だが、問題なく携帯電話が使える)

岩田は公園のベンチに腰掛け、しばらく考えていた。しかし、考えがまとまらなかった。
   
(京都へ行こう)

 
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風景
有馬温泉・太閤橋
風景
瑞宝寺公園:©神戸観光局
風景
瑞宝寺公園:©神戸観光局
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