太閤街道殺人事件
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「木下藤吉郎の息子ですが、現在、阪奈大学付属高校の2年」
再び、畠山警部補が話し始めた。
   
「私立の名門校です。大麻所持で逮捕されたら、間違いなく退学。ところが、木下一樹は退学になっていない」

「植芝会長あたりが、もみ消したと言うことだな」
岩田がそう応えた。

「中館先輩の方は、どうだった?」
岩田が話を変えた。
 
中館先輩は、梅田片山建設の顧問をしている元・大阪府警の署長。淀第一不動産の社長も兼任している警察の天下りである。

畠山警部補は頭をかいた。

(そういうことか…)
岩田は理解した。

「署長時代の部下が証言しています。顧問から、和田かつ也について教えてほしいと、問い合わせがあった」
 
「問い合わせは、和田が岐阜に宿泊した日の深夜。にも関わらず、和田かつ也なんて知らないの一点張り…」
中館先輩とのやりとりを、畠山警部補が説明した。

岩田は苦笑するしかなかった。

「岩田さん、あなたの考えを教えていただけませんか?」
兵庫県警の伊吹警部がそう尋ねた。

「木下藤吉郎周辺の人物、あるいは和田の近くにいた人物。犯人はこの辺りだと思いますが、今のところ…」
岩田がそう応えた。

「我々も、その可能性が高いと考え…」
伊吹警部の顏が曇った。

「圧力が掛かったのですね」
岩田がぽつんと呟いた。
      
「圧力というか、デリケートな問題なので、捜査は慎重に…」
伊吹警部が少し訂正した。

「でも、殺人事件です」
岩田がきっぱりと言った。

「慎重にですが、捜査を続けています。しかし、決め手となる物証が…。凶器も見つかっていません」
伊吹警部が事情を説明した。

 
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