大阪・難波
「10月24日、田々和かつ也に呼び出され、有馬温泉へ行かれましたね?」
「そこで、木下一樹と」
隣にいるカレンに静かに語りかけた。
「ウソをついても仕方ないわ。そのとおりよ」
あっさり認めた。
「有馬温泉で、田々和と会いましたか?」
「会ってないわ。ちょうど到着したところ。逃げるのが精一杯だったわ」
「どうして、言いなりに?」
田々和は先輩・柿元順子の男。知らない人物では無いが、カレンがそこまで協力する義理も無いはず、そう考えた。
大阪・難波
「大麻を…。内緒にしてやるから少し協力しろと」
素直に告白した。
「その日の状況を詳しく?」
「夕方の6時前よ。電話が掛かってきたのは。車で有馬温泉まで迎えにきてくれと頼まれたわ」
「エリカ姉さんは?と尋ねたわ。体調が悪くて、そう言っていた。それだけ。絵のことなんか言っていなかったわよ」
岩田が絵を探していることは、カレンもよく知っている。
「もういいかしら。疲れたわ。エリカ姉さんがお店を辞めて、忙しいのよ」
そう言った後、立ち上がり歩き出した。そして、マンションの中へ消えた。