夕暮れ迫る大阪城を一人の男が眺めていた。
「ここから見る大阪城は本当にきれいですね。加美室長から聞きました。ここでよく大阪城を」
近付き、木下藤吉郎にそう言葉をかけた。
「岩田さんは刑事だったようですね。畠山という刑事さんに聞きました」
(余計なことを)
「最近、よく思うのです。秀吉と同じ名を私に…」
大阪城を眺めながら、木下藤吉郎が話し始めた。
「付けたのは父ですが、母はいじめにあうと思ったらしく、ふじおという読みにしました」
「父は私が3才のときに亡くなり、まったく記憶がありません。父親になった私は、息子とどう接したらいいのか、わからなかった」
「部下のこともわかっていなかった」
「昨日、加美と話をしました。あいつは自分の責任だと言っていました。加美に責任はありません。すべての責任は私です」
加美は七洋電子機械工業の秘書室長。
「結局、裸の王様だったのですね」
「誰でも裸の王様です。自分のことを見えてる人間なんて、いないと思いますよ」
そう慰めた。
(責任があるとすれば、井戸口と田々和かつ也だ。ああいう連中がいなければ、この事件は起らなかった)
(そして、それは私の責任だ。6年前の事件のとき、真相をきちんと解明していたら井戸口は失脚していた)
「知事選は取り止めることにしました」
小さな声であったが、はっきりと。
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