「片山社長のことです。代わりの候補者を探すでしょう」
岩田が代わりに説明した。
(あの男は、この程度のことで引き下がらない)
「岩田さんも、片山社長と同じ考えですね」
大阪と名古屋を一体化するための方法である。
「いや…」
岩田は頭をかくしかなかった。
パーティのときは、反応を見るため、片山社長の考えを言っただけである。
もちろん、こういうことは専門外。
「確かに、すでにある鉄道を利用すれば、短期間で済む。建設費も抑えられる」
「木下藤吉郎社長はどうします?」
岩田が尋ねた。
「私は30分・600円に、こだわりたいと思います。鉄道が完成すれば、東京に対抗できる経済圏ができます」
「息子も、東京なんかに負けてたまるか、大阪が日本の中心だ、と言ってました」
「昨晩、息子と話をしました。じっくり話をするのは初めてです」
木下藤吉郎が、一息いれたあと、そう告白した。
「そうですか、息子さんと」
岩田の呟きとも、相づちとも取れる返事であった。
「高校を辞めて、働くと言い出しました。落ち着いたら定時制高校に入る」
「親父も働きながら、学校に行ったんだろ。俺もそうすると」
辺りは、すでに真っ暗。
ライトアップされた大阪城が、天空に耀いていた。
|
|
|
|