太閤街道殺人事件
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「何かは木下藤吉郎、そんな気がする」
岩田が木下藤吉郎の名前を出した。
    
警察の捜査が、どこまで進んでいるのか、確認するためであった。

「岩田先輩には隠せませんね」
畠山警部補が苦笑しながら、応じた。

「我々も、今回の事件に木下藤吉郎が関係していると考えています。ですが…」
畠山警部補の言葉が止まった。
      
「慎重に捜査を続けている、だろ」
岩田が助け船を出した。

「はい。木下藤吉郎社長は大阪を活性化するため、経済圏の拡大を訴えています」
     
「つまり、名古屋を取り込むことを主張しています」
畠山警部補が木下藤吉郎について、話を始めた。

「具体的には、名古屋・大阪間を30分、6百円で走る鉄道の建設。大阪から名古屋まで通勤できるようになります」

「問題は建設資金。2兆円は掛かります」
     
「大阪市も、大阪府も、共に数兆円の借金がある。そういう中、2兆円の事業は…」

「木下藤吉郎社長は、行政を徹底的に合理化する。民営化できるものは、すべて民営化する。そう宣言しています」
     
「木下藤吉郎支持のホームページやブログでは、大阪市の24区を8区にするとか」
   
「地下鉄や水道局は民営化する、職員を半分に減らす、外郭団体もすべて廃止する」
     
「そういう主張をしているものが多いのです」
畠山警部補がそう続けた。

「井戸口が読んだら、激怒するだろうな」
苦笑しながら、岩田が呟いた。

「それです。井戸口は、木下藤吉郎が知事になることを阻止したい、と考えているはず」
畠山警部補が畳み掛けるように応じた。
    
「先ほども言いましたが、和田かつ也殺害に関しては、井戸口はシロです」

「アリバイもあります。その日、画商の湯浅と井戸口は、姉妹都市の市長・歓迎パーティに出席しています」

「それから、ツアー客についても捜査が終わっています。不審な人物や、和田かつ也と関係がありそうな人物はいません」
   
頭をかきながら、畠山警部補が捜査の状況を説明した。

(兵庫県警とは、うまくいっているようだな)
      
兵庫県警の捜査協力に当たっているのが、畠山警部補。彼に細かい捜査情報が伝えられているということは、関係がうまくいっている「証」。
      
「この辺で、よろしいでしょうか?」
畠山警部補が、岩田に尋ねた。

「ああ」
これ以上、何も出てきそうにない。

岩田と畠山警部補は、和田かつ也の部屋から出た。そして、カギを管理人に返却し、マンションの外へ移動した。

 
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