太閤街道殺人事件
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いい天気である。
秋晴れの空が広がっていた。

「説明する必要、無いかもしれませんが」
畠山警部補が切り出した。

「ここの管理人、午後8時以降、別室で休んでいます」
つまり、午後8時以降なら忍び込んでも、管理人に見つからない。
   
「ツアーの添乗員ですが、事件とは関係ありません」
畠山警部補が続けた。
    
「名前は確か、小林優香(ゆか)。名古屋総合ツアーサービスという派遣会社だったかな」

「ツアーバスの運転手も関係なさそうです。では、私はこれで」
片手を上げ、畠山警部補は車に乗り込んだ。

(相変わらず、よく気が付く男だ)
去っていく刑事を見送りながら、岩田はそう思った。
      
(刑事には、もったいない!)
   
(今日の話をまとめると)
畠山警部補を見送ったあと、岩田は歩きながら考えた。

(大阪の黒幕・井戸口勝は、木下藤吉郎が知事になることを阻止したいと考えた)
  
(そこで和田かつ也を使い、木下藤吉郎を調査した。3千万の絵はその報酬)
      
(和田かつ也が絵を画商に渡せば、現金に換わる予定だった)
     
(そんな中、和田かつ也が殺害され、絵も消えた)

(絵を買い取る予定だった画商は、すでに絵の販売先を決めていた。困った画商は井戸口に相談。井戸口は画商に岩田を紹介した)
   
(こういう筋書きになる)
岩田はそう思った。

(疑問もある)
   
(用心深い和田かつ也が殺害されたことだ。危なくなると、一番先に逃げ出すタイプ。簡単に殺される男では無い)
      
(そして、太閤街道ツアーに参加したこと。虎穴に入らずんば虎子を得ず、というコトワザがある。しかし、和田かつ也は虎穴に入らない男だ)

(それに絵が消えたことだ。犯人にとっては、絵を盗むことが本題なのか)
疑問が次から次に浮かんできた。

(とりあえず、ひとつひとつ調べていこう)
岩田は自分自身に言い聞かせた。

井戸口勝が理事長をしている財団に、電話を掛けた。

事件の黒幕が井戸口勝なら、直接、話をした方が早い。知らない仲ではない。

「午後であれば、時間を作れる」
井戸口勝から、そう回答があった。

午後2時、財団で会うことになった。

 
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