「岩田さんが言われたように、千円です」
気迫のこもった声で、そう断言した。
ホワイトボードの『片道運賃X35』の下に、『1000円×35』と追加した。
「出発駅から到着駅までの運賃が、千円であれば、1ヵ月定期は3万5千円となります」
もちろん、3万5千円は平均的な金額である。
「そして、この3万5千円であれば、会社から支給してもらえる」
「つまり、片道千円以内が通勤できる場所です!」
木下藤吉郎は大きな声で吠えた。
「阿倍野の岩田さんは、大阪駅まで環状線で200円。そう、おっしゃいました」
「自宅から大阪駅まで、2百円」
右手で、Vサインを作った。
Vサインは2百円を表わしているようであった。
「名古屋駅から会社までも、約2百円」
左手でもVサインを作った。
「この2つの運賃を併せると、4百円!」
右手と左手を顏の前に動かした。
2つのVサインが並ぶ形となり、4百円を表わしているようであった。
「片道運賃千円から4百円を引くと、残りは6百円」
「これが、大阪駅から名古屋駅までの運賃です」
木下藤吉郎の熱弁が続いた。
大阪・名古屋間は、直線で約140キロ。
30分で結ぶためには、平均速度280キロで走行する必要があると話した。
そして、鉄道建設には、2兆円が必要だという話を説明した。
さらに、鉄道の特徴は『止まらない』であると断言した。
鉄道は、レールと車輪の摩擦が少ないため、効率がいい。
逆に、摩擦が少ないため、止まりにくい。
だから、駅を造らないことが大事であると熱弁した。
駅がなければ、止まる必要はない。
大阪・名古屋間に駅を造らない。
駅は大阪駅と名古屋駅だけで、駅員も少なくて済むと話した。
ランニングコスト削減のため、水力発電、地熱発電などを行ない、必要な電力は自分でまかなうことが大事であると説明した。
木下藤吉郎の講演は午後8時30分に終了。
その後、司会者が登場して、『質問はありませんか』と観衆に尋ねた。
大阪府知事選への出馬について、質問が集中したが、木下藤吉郎はうまくかわして明言しなかった。
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鉄道線路 |
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近鉄:©三重フォトギャラリー |
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近鉄:©三重フォトギャラリー |
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