「ご存知ですね?梅田片山建設で使われているコード名ですから」
顧問は押し黙ったままであった。
「木下藤吉郎の考えは、大阪・名古屋間に30分・6百円で走る鉄道を建設し、1つの経済圏にする。しかし、新たに線路を引くとなれば、時間と金がどれだけ掛かるか…」
「合理的でない。そう考えたのが片山社長です」
「そこで時間を買うことにした」
「たとえば、携帯電話事業に参入する場合、一から始めると、アンテナを設置するだけで何年も掛かる。では、どうしたらいいのか?」
「すでにある携帯電話会社を買収すればいい。鉄道も同じです。大阪・名古屋間は近鉄という鉄道会社がすでに営業している。これを利用すれば、いいわけです」
ジャケットの内ポケットから地図を取り出し、テーブルの上に広げた。中部・関西地区全体が描かれた地図であった。
「近鉄の線路は大きく迂回しているため、大阪・名古屋間の距離は180キロ以上」
近鉄の大阪・名古屋間の線路は、南(紀伊半島側)に弧を描くルートである。
「そのため、特急でも2時間以上掛かる」
該当する線路を指でなぞった。警部補が身を乗り出した。一方、顧問はチラッと見ただけであった。
「そこで、迂回している線路を直線に付け替える」
「具体的には、平城駅と近鉄長島駅の間に線路を建設する」
平城駅は奈良市の北部に存在する。近鉄長島駅は三重県桑名市に存在する。名古屋線では三重県最北端の駅で、木曽川を越えると愛知県である。
「この区間だけを建設する」
「バイパス線路ができれば、大阪・名古屋間は150キロ。時速2百キロで走行すれば、45分で行き来できます」
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近鉄・路線案内図 |
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