つながらない線路

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風景
伏見稲荷大社
  
午後7時前、ホテルの3階にある大広間へ向かった。

受付で会費を支払い、会場の「蒼天の間」に入った。既に人であふれ、熱気に包まれていた。
      
  
「圭子ちゃん!」

壇上近くのテーブルにいるQnewニュースの記者・三条坂圭子を見つけた。

「阿倍野の御隠居様、ご無沙汰しています」

気づいた三条坂圭子が笑いながら、そう挨拶した。

「ほんと。22時間ぶりだね。約束どおり木下藤吉郎社長を紹介してもらおうかな。ただし、刑事だったことは内緒だよ」

「はい、はい。わかりました」
   
うれしそうに応えた。
      
風景
京都・鴨川
  
午後7時ちょうど、司会者が壇上に上がり、パーティが始まった。
    
しばらくすると、木下藤吉郎が加美室長を伴い、近くに現れた。

「木下藤吉郎社長」
   
三条坂圭子が呼び停めた。二人が側にやって来た。

「こちら、阿倍野データニュースの岩田さんです。岩田さんは昨日の…」
   
「昨日はありがとうございました。阿倍野の岩田さんですね」
   
三条坂圭子の言葉をさえぎり、木下藤吉郎が岩田に声を掛けた。

「はい。昨日の講演は感銘いたしました」

「岩田さんのおかげです。急な質問に見事な対応でした」
      
「そう言われると照れますな」
   
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