京都・高瀬川と高瀬舟
いつの間にか、植芝隆之・中京総合ツーリスト会長、片山豪太郎・梅田片山建設社長も集まっていた。彼らの表情も見逃さないよう、気を配った。
「新たに鉄道を造るのは、時間も金も掛かり過ぎるのでは」
周りにも聞こえるよう、割りと大きな声で話した。
「大阪・名古屋間はすでに私鉄があります。それを利用した方が…。もっとも私鉄の線路を改修する方法だと、45分・千円になるとか。木下藤吉郎社長が言われる30分・6百円には及びませんが」
片山社長の顏が曇った。そして、ダメを押した。
「この方法なら1兆円の資金と短期間で済むそうです」
片山社長の顏が苦虫を潰したような表情になった。
「しかし、なんです」
話を変えた。
近鉄特急
「改革を目指す方が知事になるのは大変です。自分たちの利益を守るため、官僚が激しく抵抗してきます。昔、外務省を伏魔殿と言った政治家がいましたが、地方自治体もお化けの棲み家になっています」
「そのとおりだと思います。しかし、誰かがお化け退治をしなくてはなりません」
木下藤吉郎は思い詰めたように返した。
「政治家のスキャンダルを必至に捜す官僚もいます。社長も気を付けてください」
「ご忠告、ありがとうございます」
木下藤吉郎の表情に変化はなかった。ちょうどそのとき、係員が木下藤吉郎のそばに。そして、告げた。
「まもなく御挨拶の順番がきます」
木下藤吉郎、植芝会長、加美室長がテーブルを離れた。