太閤街道殺人事件
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「ところが、和田かつ也は木下陣営をユスルことを思い付いた」
畠山警部補の説明が止まった。
      
「和田かつ也は、これはおいしいと思ったのだろう」
岩田がそう解説した。

「ひとつは、立石浩一から木下陣営の内部情報を入手していた」
 
「どこへ行って、誰と話をすれば、うまくいくのか…、ユスリに必要な情報はすべて持っていた」

「もうひとつは、植芝会長」
   
「木下一樹を孫のように思っている。一樹のためなら、いくらでも金を出す」

「そのうえ、表沙汰にしたくないから警察には通報しない。さらに、公安委員を務めている植芝会長なら、その筋にも依頼しない」

「リスクが少ないうえに大金が取れる、おいしい仕事だと和田かつ也は考えた」

「和田かつ也は井戸口にネタを渡した後、すぐにユスリに取りかかった」
    
「ネタが使われる前に、木下陣営をユスる必要があった。絵の換金を後回しにして、木下藤吉郎のパーティが行なわれる岐阜・長良川温泉のホテルへ向かった」

「もっとも、井戸口はこのネタをすぐに使うつもりは無かった。実際に知事選が始まってから、このネタを使う予定だった」
 
これは、府庁の市谷部長の見解。
       
今、ネタを使うと、木下藤吉郎を府知事選から降ろすことは出来ても、木下藤吉郎の意志を継ぐ別の人物が出馬する。
      
「和田かつ也は長良川温泉のホテルで、木下陣営の植芝会長と片山社長に接触した」

「ゆすられた植芝会長は、和田かつ也を自社の太閤街道ツアーに参加させた。時間稼ぎと拘束するため」

「そして、木下陣営はユスってきた男を調査」
     
「元大阪府警の署長だった中館顧問からの情報で、和田かつ也の正体を知った。ユスリのプロであると」

「植芝会長は、和田かつ也と取り引きするつもりだった。しかし、片山社長は最初から、あるいは途中で…」

「和田かつ也が710ー3について知っていたから、ですね?」
畠山警部補が確認した。
      
岩田がうなずいた。そして続けた。
      
「和田かつ也は、ネタ探しの途中、このコードを知った。そして、その意味も」
       
「木下陣営と接触したとき、和田はこのコードの話も出した」
岩田の推理である。
      
「でも、片山社長としては、そこまで知られているのであれば…」
   
「独断で、その筋に依頼したわけですね。和田かつ也の処置を」
畠山警部補が、岩田の推理の続きを述べた。

「木下一樹が聞いている。片山社長の電話を」
うなずいたあと、岩田が推理の根拠を説明した。

「こっちでカタをつける。会長は心配しないでください。片山社長はそう言っていたと、木下一樹が話してくれた」

 
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