太閤街道殺人事件
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「問題はその後。有馬温泉は新大阪より新神戸の方が近い」
有馬温泉は、新神戸駅で下車した方が早く着く。

「車ですね。加美室長が新大阪で降りたのは、そこです」
畠山警部補が補足した。

「今から、殺人が行われるかもしれない。タクシーを使えば、目撃者を作ることになる」
      
「だから、加美室長は会社に電話を掛け、部下に車を用意させた」
      
「部下を巻き込みたくない。だから、加美室長は自ら運転して走った」
畠山警部補が続けた。

「助けた人物がいますね、立石浩一を」

「立石浩一は、信頼できる知人に電話を掛けた。そして、新神戸駅に車を用意させた」
    
「桑名から新神戸まで、1時間半以上あります。車を用意することもできたと思います」

「新神戸着が午後7時5分。駅から有馬温泉までは、車で約15分。午後7時半前には到着できます」
畠山刑事が断言した。
      
「ホテルを飛び出した、和田かつ也だが」
岩田が、再び推理を話し始めた。

「その筋の人間が、有馬温泉の要所にいた」
有馬温泉へつながる主要な道は、4つ。それらを押さえられると、袋のネズミになる。

「和田かつ也は、有馬温泉から逃げ出せなかった」
     
「立石浩一は取り引きを中止させるため、ウソをついたつもりだが、実際、片山社長から依頼された、その筋の人間が有馬温泉にきていた」

「だから、鼓ヶ滝公園ですね」
畠山警部補も理解した。そして、続けた。
     
「夕方以降であれば、訪れる人はほとんどいない。隠れるのにはベストの場所です」
      
「さらに、六甲山への登山口にあたります」
   
「朝まで隠れて、夜明けとともに六甲山へ登り、反対側に下りて、市街地へ逃げ込めばいい」
     
鼓ヶ滝公園から、滝川沿いに六甲山へ登るルートは、紅葉谷コースと呼ばれている。
     
「まあ、六甲山越えをするのは最悪のときでしょう」

 
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神戸の夜景:©神戸観光局
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