太閤街道殺人事件
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岩田が神戸北署に到着したのは、午前10時前。
警察署の前が騒然としていた。警官が走り回っている。

(どうした?)
警官から、話を聞ける雰囲気ではない。
 
カメラを抱えた男が、警察署の建物から飛び出てきた。
新聞記者のようであった。

「何があった?」
岩田が新聞記者に尋ねた。

「有馬温泉で、男の死体!」
新聞記者が叫んだ。そして、車に乗り込んだ。

(男の死体)
岩田は新聞記者の車を追った。
    
新聞記者の車は、有馬温泉の『ロープウェイ駅の前にある』駐車場に入った。
駐車場には、すでに警察車両が数台、駐まっていた。

カメラを持った新聞記者が車から降り、そして、走り出した。
岩田も追いかけた。

行き先は、鼓ヶ滝公園。
和田かつ也が殺害された現場であった。
   
多数の警官と立ち入り禁止のロープ。その中央にブルーシートが置かれていた。
      
「伊吹警部!」

気付いた兵庫県警の伊吹警部が、岩田のもとにやって来た。

「立石浩一です。胸を刺されています。死後10時間程度。くわしいことは、これからです」
伊吹警部が端的に事態を説明した。

現場を離れた岩田は、神戸北署へ戻った。
ロビーで待機し、くわしい状況を聞くため、伊吹警部を待った。
      
午後5時過ぎになって、ロビーに伊吹警部が現れた。

「うかつでした。立石浩一もマークしていたのですが…」
伊吹警部が残念そうに語った。

「立石浩一の自宅マンションを調べましたが、とくに怪しいところは。絵も無かったようです」

「ただ、走り書きが、電話機の側のメモに」
手帳を取り出し、一枚の紙を破った。そして、それを岩田に渡した。

紙片には、俳句のようなものが書かれてあった。
『カラス飛ぶ 三ツ雲の空 ああうれし』

 
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風景
有馬温泉・ロープウェイ
風景
神戸の夜景:©神戸観光局
風景
神戸の夜景:©神戸観光局
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