「内部告発と言えば」
三条坂圭子が切り出した。
「昨日、なにわ産業開発財団・井戸口理事長についての資料がうちに。業者との癒着について具体的な内容ばかり。理事長をよく知る人物からの告発ね」
「今、裏付けを取っています。今回の事件と何か関係しているのでしょうか?」
市谷部長の笑顔が浮かんだ。
車は田園の中を北へ向かって進んだ。
「どうして、こんな俳句を思い付いたのかな?」
「伊勢中川駅で見たのでは。空に雲が三つ、そして、カラスが飛んでいた」
「かつて、ここは嬉野町。隣が三雲町。さらにその隣が香良洲町。快晴の空をカラスが飛んでいる。そんなありふれた風景でもおもしろいと思った」
「風景と地名を掛けたわけか」
「なぜ、絵を処分しなかったのかしら」
今度は三条坂圭子の疑問であった。
「絵を持っていれば、犯人である証拠になる。もったいないけど、燃やしてしまえばいいわけよ。証拠は残らない。でも、それをしなかった…」
「私が絵を捜していたから。阿倍野データニュースの記者と自己紹介した」
「調べれば、すぐにわかる。サイトを運営しているのは記者では無く、探偵だと。動き回っているのは、何かの調査」
「三千万円の絵の捜索なら辻褄があう。自分の手元にある絵を探偵が捜している。そう気付いた」
「探偵さんに好意を持ったわけですね。だから、絵を処分しなかった」
「先日、岩田辰郎で検索したところ、結構、有名人ですね。いろいろ出ていましたよ」
「近所に変わったおじさんがいて、街のあちこちを調べるように歩いている。ビルの前で手を合わせたり。近くのたこ焼き屋のおじさんに尋ねると、たっちゃんだね、街の見回りをしているんだ」
「そのおじさん、元刑事さんで退職後、探偵をしているみたい。もっとも探偵とは名ばかり。散歩と称して街の防犯係を務めているようです。手を合わせたのは、そこで強盗殺人事件があったから。おじさんは自分の責任だと思っているようです」
「これ、女子大生のブログ。立石さんも読んだのかも…」
三条坂圭子の声がだんだんと小さくなった。
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