太閤街道殺人事件
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「田々和が?」

「3日前、死体となって発見されました。鋭利な刃物で刺され、即死でした」

伊吹警部がそう応えたあと、説明を始めた。
     
「場所は有馬温泉の一番奥に位置する紅葉谷公園です。死亡推定時刻は前日の19時から21時の間」

「田々和は加藤和馬という偽名を使い、ツアーに参加し、有馬温泉に来ていました。その日の夕刊にも殺害されたのは加藤和馬ということで記事になりました」

「参加していたのは太閤街道ツアー。凶器も見つかっていません。目撃情報もありません」

続けて畠山警部補が説明を始めた。
   
「昔の組関係は殺害に関わっていないようです」

「組を追放されたあとも、ユスリを仕事にしていました。しかし、ヘタを打つことは無く」
  
「それゆえ、取り調べたことがあるのは岩田さんだけです。そこで話を伺いにきたというわけです」
  
「短刀直入に伺います。何か思い当たることはありませんか?」

兵庫県警の伊吹警部が尋ねた。
      
顔が浮かんでこない。チンピラという顔をしていたのは間違いない。しかし、具体的な顔の形が思い出せない。

カラスのような男という印象が残っていた。ずる賢く「ガァ、ガァ」とうるさく吠えるくせに、やばくなると一番先に逃げ出す、用心深い男である。
   
殺害されたことが不思議に思えてきた。
      
「行きずりだとしても、顔見知りだとしても簡単に殺される男では…。余程、油断していたのか、気の許した相手だった」
   
気の許した相手と言った後、思い出した。

 
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