太閤街道殺人事件
 ←前       宿命の依頼6       次→ 

「2つめは、カメラバッグの中にメモがありました。これは実物をコピーしたものです」
  
伊吹警部が胸の内ポケットから「10×15センチ程度の紙」を取り出した。白い紙には『710ー3=1兆』という計算式が書かれてあった。

(数学なら710ー3は707だ。それが1兆ということは暗号か)
     
「なんと、すばらしい平城京…」
  
思わず呟いた。日本史の年号の覚え方である。奈良の都・平城京誕生が710年。710を「なんと」と読む。

「なんと、明るい平城京、では?」
  
苦笑しながら畠山警部補が応じた。

「すばらしいではなく、明るいだったか。鳴くよ、ウグイス、平安京だな」

「はい、そうです」
    
京都に遷都された平安京の誕生が794年。794を「鳴くよ」と読む、有名な年号暗記方法である。

「3つめは、2日目から参加したことです」
   
伊吹警部が説明を再開した。

「初日は愛知と岐阜にある秀吉ゆかりの地を訪れます。しかし、地元の人間からすれば、今さらということのようです。そこで2日目から参加するプランもあります。2日目の朝、岐阜駅で合流します」
    
伊吹警部が湯飲み茶碗を手に取り、飲み干した。

「田々和は生まれも育ちも大阪。それ以外の場所で暮らしたことはありません。地元でない人間が初日を飛ばした」
      
畠山警部補が静かに立ち上がり、部屋の隅の机に向かった。机の上の急須からお茶をいれ、話を続けている伊吹警部に出した。そして、空となっている茶碗を片付けた。
   
茶碗が「空」だと気付いた行動であった。

 
 ←前       宿命の依頼6       次→ 

風景
奈良・平城京
風景
奈良・平城京
風景
京都・平安神宮
    Qnewニュースプレゼンツ