(相変わらず、よく気が付く奴だ)
捜査協力を担当させるには、一番適した人物である。隣接する県警との間にはアツレキや縄張り意識がある。そして、それが捜査の妨害となる。だが、彼の性格なら他県の刑事ともうまくやれる。
伊吹警部が軽く会釈したあと、話を続けた。
「田々和の自宅は新大阪駅近くのマンション。当日の朝に岐阜へ向かっても間に合いますが、前日から行っていました。そして、ツアーが利用する長良川温泉のホテルに宿泊していました」
「添乗員の話では、長良川温泉のホテルに到着後、旅行会社から1名追加すると電話があった」
「旅行会社の説明では、ツアー直前に申込みをしたそうです。小さな会社なので、客の要望にはできるかぎりお受けしている。そのうえ、ツアーに空きがあった」
「岩田さん、何か思い当たることは?」
畠山警部補が尋ねた。
「やはり、仕事で参加したとしか思えない」
しばらく雑談したあと、2人の刑事は帰った。
(?)
部屋の片付けを始めたとき、隅の机の上に1枚の写真が置かれていた。
(田々和かつ也!)
間違いなく彼の顏写真であった。ようやく顏を思い出した。写真は6年前に比べて、少し老けていた。
(畠山の奴、わざと置いて帰ったな。気になった俺が調査を始めると考えた。それとも調査をしてくれという意味か)
しばらく考えていると、腹が空いたことに気付いた。時計は正午を指していた。
(とりあえず、メシだ)
その時、再び電話が鳴った。
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