「探偵さんって、儲かるものなの?」
エリカこと柿元順子が席を立つと、カレンが話し掛けてきた。あいまいな返事をしながら、行き先を追った。
一番奧のテーブルに着いた。観葉植物の間から客が見えた。六十過ぎの恰幅のいい男である。
(見覚えがある)
「エリカさんのお客、誰だったかな、名前が出てこなくて」
「井戸口理事長ですね」
ちらっと奧を見ただけで応えた。
(井戸口勝!)
元大阪府の幹部で、6年前の事件の被害者。なんという偶然。
岩田がすぐに気付かないほど、変わっていた。髮は白く、そして、薄く。身体は一回り大きくなっていた。
「よく来るの?」
「私が入店したときには、エリカさんの…」
「カレンさんはいつ、この店に?」
「2年前よ」
しばらく雑談した後、北新地のクラブを出た。その後、大通りの歩道にある大理石のベンチに腰かけた。
今日、色々なことがあった。
後輩の畠山警部補と兵庫県警の伊吹警部が、殺害された田々和かつ也の捜査のため訪れた。
次に、湯浅という画商が訪れ、田々和が持っていた3千万円の絵の捜索を依頼された。
捜索のため、田々和の女でホステスをしている柿元順子に会った。そして、彼女が在籍しているクラブで、井戸口勝を見た。客として店に来ていた。
6年前、府の幹部だった井戸口勝はナイフで腹を刺された。犯人の身代りとして出頭してきたのが田々和である。
一息ついたあと、南へ向かって歩いた。
前方の明るい光が、心斎橋に到着したことを告げた。立ち並ぶブランドショップの灯りと、広告看板のネオンで街が輝いていた。
(今日のところはここまでだ)
もっと情報が必要であった。地下鉄を使い、阿倍野に帰った。
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