「10月22日!」
岩田が思わず叫んだ。
原因は、後援会パーティの日程表。
10月22日、岐阜・長良川温泉『ホテル清流』とあった。
殺害された和田かつ也も、この日、このホテルに宿泊している。そして、翌日から太閤街道ツアーに参加している。
(和田かつ也が宿泊した日、木下藤吉郎のパーティが開催されていた。ということは、どうなる?)
腕を組み、岩田が天井を見つめた。
(木下藤吉郎や植芝会長をユスるため、あるいはユスリのネタ探し?)
和田かつ也の仕事はユスリであった。
(岐阜に行った理由は、その辺だな)
岩田はそう思った。
「その辺りだが…」
岩田の独り言。
(警察もその辺りは掴んでいるはず。どうやら、畠山にハメられたようだ)
(警察も何の目的で岐阜に行ったのか、大体のところは。だが、植芝会長は公安委員。木下藤吉郎は大阪府知事選に出馬予定)
(捜査がやり難い。そこで私を利用することにした?)
(事件の話を聞かせれば、勝手に調査を始めると計算したわけか。和田かつ也の写真を置いて帰ったのも…)
(しかし、よくガンバルものだな)
木下藤吉郎たち、である。
パーティは岐阜のあと、一日置いて、名古屋のホテルで開催されている。さらに、その次の日にも大阪のホテルで開催している。
(選挙とは、そういうものかも知れないが、知事選のパーティを他府県で開催しても)
岩田が疑問に思った。
(資金集め?)
(金なら、植芝会長が持っているのでは?)
参考までに調査を行なった。
ネットの掲示板に答えらしきものがあった。
大阪の選挙は、人気がすべて。
人気を得るには、おもしろい選挙をすること。
大阪人の価値観は、おもしろいか、おもしろくないかで決まるから。
他府県でパーティをして、盛り上げるのも作戦である。
『大阪の状況はどうなっている?』
他府県の人間から聞かれると、大阪人は勘違いを起こす。今度の選挙はおもしろいかも、と。
(それは単に、大阪人はアホと言っているだけ)
ツッコミを入れたくなる答えであった。
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