太閤街道殺人事件
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翌日、起床したのが午前6時。
支度を整え、岩田は地下鉄・御堂筋線の昭和町駅へ向かった。
     
行き先は、殺害された和田かつ也のマンション。
混雑する地下鉄で、新大阪駅に。駅から徒歩十分で到着した。
      
8階建ての、オートロックでは無い、古いマンションであった。
入口に監視カメラは無かった。

建物に入ると、通路の横に管理人室があり、その前に見慣れた人物がいた。
大阪府警の畠山警部補である。
 
「畠山くん」
近付き、岩田が声をかけた。

「あ、岩田さん」
振り返り、畠山警部補が応えた。

「昨日の電話のあと、気になりまして。もう一度、調べてみようと」
畠山警部補がそう説明した。

(味なことを)
岩田先輩が、ここに来ると考え、気をきかせたようだ。刑事がいれば、部屋に入ることができる。

畠山警部補が、管理人からカギを受け取った。

和田かつ也の部屋は301号室。3階の東の端に位置していた。
畠山警部補が白い手袋を着け、ドアを開けた。
     
そして、部屋の中へ入った。
岩田も白い手袋を着け、畠山警部補に続いた。

「きれいな部屋だな」
部屋にはゴミひとつない。
   
モノトーンで統一された、必要最小限の家具だけが置かれていた。
一言で言えば、モデルルームのような室内である。

「ええ。男の部屋とは思えません」
畠山警部補も同意した。
      
2LDKの部屋。荒された様子は見られない。
家具が少ないため、捜す場所もわずか。絵は無いと、すぐにわかった。

「見た感じでは、わからないと思いますが、鑑識によれば、室内を物色した跡がありました」
   
「しかし、和田かつ也以外の指紋は検出されていません。管理人や隣の住人も、特に変わったことは無かった、と証言しています」

「単独犯か、あるいはプロということだな」
複数の『素人』が訪れたなら、物音や気配で隣の住人が気付いている。

「絵は誰かが持ち去ったのか、あるいは初めから、ここには無かった」
畠山警備補の推測であった。

「車も調べましたが、何も出てきません。和田かつ也に関係する場所はすべて」
畠山警部補が、捜査の経過を説明した。

「和田かつ也が持っていたのは、間違いないようだ。誰かが絵を持ち去った、ということだな」
岩田の推測であった。
      
「銀行の通帳と、ネタの写真が残っていました。そこから、ユスられた人物を割り出したのですが…」
畠山警部補の顔が曇った。

「協力してもらえない?」
岩田が確認した。

「はい。今さら、古傷を暴かれても困るということでしょう」
畠山警部補が応えた。

(確かに。折角、金で揉み消したものを。警察に非協力的なのは、仕方のないことかもしれない)

 
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