太閤街道殺人事件
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「井戸口勝を見たよ。柿元順子の客として来ていた」

6年前の事件の被害者である。
  
「湯浅という画商ですが、昨日、調べました。政治家や官僚との黒い噂が多数あります。その中に井戸口がいます」
   
今度は畠山警部補が告白した。

(井戸口と画商がつながっている)

絵を使い、ワイロを渡す方法がある。政治資金の規制が強化され、直接、現金を渡すことができなくなったため、考え出された手法である。

業者が絵を政治家や官僚に、大臣の就任祝いとか誕生日の祝いという名目でプレゼントする。プレゼントされた側は、絵を画商に売って現金化する。つまり、画商もワイロを渡す業者もグル(仲間)。今では古典となっている手法である。

そういう画商であれば、深い関係は理解できる。井戸口にはそういう噂が多数あった。

「画商の調査も必要のようだな。一応、依頼主なんだが」
   
苦笑しながら呟いた。

「はい。まず、岩田さんに依頼をしてきたことです」

「上の人間に嫌われていたから、紹介する幹部なんていない?」
   
自虐的に尋ねた。
      
「さりげなく上司に尋ねてみましたが、紹介した幹部はいないようです」
   
畠山警部補が苦笑いしながら応えた。

「となれば、紹介したのは井戸口?」

「ええ。彼なら岩田さんの能力はわかっています」

「名前が出なかったのは?」
   
「岩田さんが好意を持っていないから」
   
「井戸口の紹介であれば、私が依頼を受けない、そう考えたわけか」
      
すべての府警幹部に嫌われていたというわけではない。紹介する幹部もいるかもしれない。そうであれば、紹介者の名前を画商は出したはず。

 
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