新大阪から地下鉄を乗り継ぎ、大阪府庁へ向かった。
先約があった。
大阪府庁の市谷和生(いちたにかずお)。6年前、捜査のため、同僚や部下に聞き取りを行ったが、井戸口を恐れて非協力的であった。唯一、まともに応えてくれたのが市谷である。1匹狼だが、仕事はできる人物。
昨晩、彼に電話を掛け、概要を話した。そして、今日の昼休み、会う約束をした。
到着したのは昼前。
府庁は大阪城の西側、上町台地と呼ばれる高台に建っている。住所は大阪市中央区大手町。本館は1926年完成の歴史的建造物。古く狭いが、味がある。
「6年ぶりですね。あのときは協力いただき感謝しています」
市谷は現在、部長になっていた。ただし、出世ラインから外れた閑職である。応接セットのある個室で向かいあって座った。
「理事長のことで、と言われた時は未だに捜査をしているのかと」
笑うしかなかった。
「理事長ですが、あいかわらず裏の知事です。議員を取り込むのが得意ですから」
挨拶がわりに、現状を教えてくれた。
|
|
|
|