「木下藤吉郎について、御存知ですか?」
「知事選に出馬と噂の」
岩田が話を変えた。
「報道されている程度であれば」
「井戸口理事長は、木下藤吉郎をどう考えていますか?」
質問は「一番聞きたい」核心の部分であった。
「調査は徹底的にしていると思います。それが理事長のやり方ですから」
「相手の弱点を調べあげて、潰すわけですか?」
「本当に敵であれば。逆に弱味や弱点を利用して、味方にすることもあります」
「和田かつ也を使って、調査していたのは間違いないようだな」
調査というより、ネタ探しである。
「でも、スキャンダルを入手していたら…」
市谷部長も呟いた。
「していたら?」
すかさず、岩田が尋ねた。
「入手した切り札を、選挙が始まるまで利用しないと思います」
「選挙が始まるまで?」
「はい。今使えば、木下藤吉郎の出馬は阻止できるでしょう。でも、代わりの人物が立候補してきます。木下藤吉郎と同じ考えの人物が」
「実際に選挙が始まった後であれば、候補者を替えることができません。そこで切り札を使用すれば」
市谷部長が、何かを吐き出すように言った。
「なるほど。となると、岐阜に行ったことが…」
「和田かつ也は、すでに報酬の絵を受け取っていた。つまり、仕事は終わっていた」
仕事は、木下藤吉郎のネタ探しであった。
「岐阜のホテルに行く必要は無い」
この日、岐阜長良川温泉のホテルで、木下藤吉郎のパーティが行なわれている。
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上町台地・難波宮跡 |
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難波宮跡・案内看板 |
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上町台地・難波宮跡 |
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