太閤街道殺人事件
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「勝手に、ユスリを始めたのでは」
市谷部長が、呟きのような説明を始めた。

「木下藤吉郎のネタを入手した和田かつ也は、それを理事長に渡した」
    
「報酬は3千万円の絵。ところがそれだけで満足できず、勝手に木下藤吉郎陣営をユスった。そして、殺害された」
      
「理事長は非常に困っていると思います」
 
「もし、和田かつ也が殺害される前に、理事長の名前を出していれば、今度は…」
     
調査を命じたのが井戸口理事長であると、犯人側に告白していれば、今度は井戸口が狙われる。

「だから、絵の捜索というエサで、私を引っ張り出した?」
岩田が確認のため、尋ねた。

「そう思います。井戸口理事長は自分が再び刺される、と思ったのでしょう」
   
「岩田さんが動き回れば、それだけで」
井戸口の身辺警護になる。

「その筋にも有名ですから。元大阪府警の辣腕刑事さんは」

(井戸口の命を守るため、走り回っているわけか)
      
話は、木下藤吉郎の政策に移った。

「木下藤吉郎の公約は、府政の徹底的な合理化」
   
「府に5兆円を越える借金があります。誰が知事になっても、無駄を省くのは当然です」

「徹底的にできるか、それとも骨抜きにされるのか、知事の真価が問われます」
市谷部長が一般論を言った。

「木下藤吉郎に出来ますか?」

「わかりません。民間の経営者ですから、コスト削減は得意でしょう」
  
「問題は、官僚や議会を押さえこめるか、どうか…」

 
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春の大阪城(上町台地)
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