太閤街道殺人事件
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「名古屋と大阪を一つの経済圏にする。おもしろい考えだと思います」
    
木下藤吉郎の考えは、徹底的な合理化と経済圏の拡大。まず、名古屋を取り込むことであった。

「高速鉄道を建設し、通勤できるようにする計画ですね」

「ええ。ですが、新しく鉄道を造るとなれば、巨額の金と10年以上の時間が掛かります。郊外で1キロあたり百億円。大都市の地下は、1キロあたり5百億円の資金が必要と言われています。他に少ない資金と短期間で造る方法があれば」

「なるほど」
      
「それに鉄道を建設するというのであれば、市長選でしょう。市には交通局があります」

大阪市交通局が御堂筋線など地下鉄を運営している。

「交通局の中から優秀な技術者を引き抜き、鉄道会社を立ち上げれば、いいわけです。その上、交通局を民営化して上場すれば、資金を得ることができます」

「知事より市長ですか。たぶん、次の市長選には、なにわ未産会議の中から誰かを立てるつもりだと思います」
   
「木下藤吉郎の考えで素晴しいのは、巨大プロジェクトを成功させる方法です。特にインフラ整備は、ランニングコストを最小にすることが大事という考え方です」
   
「ランニングコストは運営していくための費用ですね?」
      
「はい。人件費とか冷房、清掃、警備費など…。冷房などのコストは、設計の仕方によって大きく違ってきます。警備や清掃も、建物の形状によって大きくコストが変わります」
   
「外部から見たカッコ良さで無く、コストや安全性でインフラ施設を考えるべきでした。関空で失敗した我々にはきびしい意見です」
   
「関空の事業計画ほどデタラメなものはなかった。地盤沈下のため、建設費が1.5倍になりました。経営も最初から民間に任せるべきでした。経営陣の中に官僚の天下りが入るべきでありません」

「井戸口に聞かせたい考えですな」
   
皮肉たっぷりに呟いた。市谷部長が苦笑しながら続けた。
 
「天下り社長が、ワイロで清掃業者を決めるような空港は失敗して当然です」

(腐った官僚はどこにでもいる)

「必要だったのは、大阪駅から15分・5百円で行くことができる国際空港でした。5千億円以上使って、空港の対岸に、りんくうタウンを造る必要はなかったのです。豪華な空港施設も必要なかったのです」

関空建設が大阪府の巨額な借金(金融負債)の元凶となっている。

 
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名古屋の夜景:©愛知県
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