太閤街道殺人事件
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中村公園は名古屋駅から西へ約2キロ。豊臣秀吉生誕の地で、公園の中央には豊国神社がある。周辺にも秀吉ゆかりの建物や史跡が多数、存在し、毎年5月第2日曜日には『太閤まつり』も開催されている。

神社におまいりした後、公園のベンチに腰かけた。

(ここなら話ができそうだ)
   
周りに人はいなかった。
      
「ツアーが最初に訪れる場所ですね?」
    
話のとっかかりをつくるための質問であった。

「はい。名古屋駅をスタートして最初に訪れます。秀吉の生まれた場所ですから、当然と言えば当然なんですが…」

「地元の人にすれば、今さらですね」

「はい。そのため2日目から参加される方もいます」
    
話のテンポがよくなった。

「田々和も2日目から参加しましたね?」
      
「はい。本来は2日目の朝、岐阜駅でツアーに合流します。ところが…」
    
(伊吹警部から聞いたとおりだな)

「旅行中、何か不審な点は?」

「特に。ツアー中は一番後ろを。会話もあまり…」
   
「そういえば、携帯電話を気にしていました。何度か取り出しては確認していました。教えていただけませんか?」
   
今度は小林優香が尋ねた。

「どうして殺害されたのか、私に責任があるのですか?」

「田々和は仕事でツアーに参加したと思います」
    
仕事はユスリである。
     
「問題はそのターゲット。現時点では…」
   
そう答えたが、半分はウソである。ユスリのターゲットが木下藤吉郎陣営であったのは確実である。
  
(知らないほうがいい)
   
これ以上、彼女を巻き込みたくなかった。
    
「あ、旅行会社の担当者ですが、お名前を教えていただけませんか?」
   
話をそらした。

「事業部の鈴木市郎さんです」
   
3時間前、名古屋駅前の旅行会社で会った。

「森のクマさんですね?」
   
少しだけ微笑んだ。その後、彼女を会社まで送ったあと、駐車場に戻った。

 
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風景
名古屋・豊国神社:©愛知県
風景
名古屋:©フォトック
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名古屋:©フォトック
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