「長浜へ行きましょう」
賤ヶ岳に向かわず、長浜市街地を目指した。
ツアーは賤ヶ岳のあと、琵琶湖を南下、長浜を訪れる。
まず、長浜城を見学する。
長浜城は、1574年、秀吉によって築かれた。しかし、関ヶ原の戦いのあと、廃城となった。
現在のものは、1983年、安土桃山時代の城郭を模して、復元されたもの。
長浜城と呼ばれているが、正確には市立長浜城歴史博物館である。
駐車場に車を止め、城を眺めたが…。
(和田は、城なんかに興味を示さない)
「先を急ぎましょう」
太閤街道ツアーは、次に黒壁スクエアを散策する。
関ヶ原の戦いのあと、長浜は北国街道の宿場町として栄えた。
近年、その名残である歴史的建造物を、街づくりに利用した。
それが、黒壁スクエアである。
レストランに、ガラス工芸の店、色んなショップが30軒ほど。年間約300万人の観光客が訪れる、人気スポットになっている。
今日も、多数の人で賑わっていた。
(ワケありカップルも、いそうだな)
不倫などをネタに、ユスリをしていた和田かつ也には、いい仕事場である。
「ツアー中、撮影している場面を見なかった。そう聞きました。間違いありませんか?」
「はい、一度も。カメラバッグから、カメラを取り出したことは無かったと思います」
「休憩しましょうか」
近くにあった、おしゃれな喫茶店へ入った。
午前10時前。
昼食には早い。お茶だけを注文した。
「ここでは、どうでしたか?」
「黒壁スクエアでは少し自由時間を取っています。ですが、最後尾を付いて歩くだけ」
「お土産も買っていなかったと思います」
「通常の観光であれば、ここはいいと思います。しかし、太閤街道ツアーだと…」
「長浜には、秀吉ゆかりの神社やお寺が多数あるはず?」
今度は、ツアーについて質問した。
「そのとおりだと思います。でも、一般客を取り込むためには、有名な観光名所を組み込む必要があります」
「そうでないと、定期的にツアーを行なえません」
岩田は、苦笑するしか無かった。
コーヒーを飲み干すと、すぐに席を立った。
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