いかにも京都、という喫茶店に入店した。
白壁に、黒い柱の外景。店内も和のテイストで、障子窓、生け花、畳のイスであった。
「有馬では、太閤の湯殿館を見学します」
小林優香が、京都の後、訪れる有馬温泉での行動を説明した。
有馬は古代からの温泉地。
一時、さびれていたが、桃山時代、豊臣秀吉によって再興される。
秀吉は、この有馬温泉がお気に入り。
川の改修など、温泉地の整備に尽力した。
太閤の湯殿館は、『豊臣秀吉の湯殿』の遺構跡に造られた施設である。
桃山時代のお風呂などが再現されている。
「湯殿館見学が終わると、ホテルへ向かいます。それでツアー3日目が終了です」
「4日目は、大阪城から姫路城へ向かう予定でした」
小林優香の説明が続いた。
ツアーは殺人事件が起こったため、有馬温泉で解散となり、4日目は行われなかった。
「しかし、今の大阪城は、秀吉が建てたものでは…」
岩田の呟きであった。
秀吉が建てた大阪城は、大阪夏の陣で焼け落ちた。今の大阪城は、昭和になって復興された城。
「今の姫路城も…」
岩田の呟きが続いた。
1581年、秀吉が中国毛利攻めの拠点として、三層の姫路城を築いた。
しかし、現在の姫路城は、江戸時代に大改築されたもの。
天守は池田輝政が、ニの丸、西の丸は本多忠政などが行なった。
「姫路城は、世界遺産にも登録されたお城です。一般的なツアー客を満足させるためには…」
小林優香の説明であった。
喫茶店を出たあと、車で京都駅へ向かった。
名古屋に帰る小林優香を送るためであった。
「もう一度、がんばってみます」
新幹線のホームで、彼女はそう宣言した。
「今度、ツアーに参加させていただけますか?」
「お待ちしています」
彼女には、笑顔が似合っていた。
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