太閤街道殺人事件
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車に戻った岩田は、国道163号線を西へ走った。

途中から裏道に入り、奈良市内で第二阪奈道路に乗り、大阪市内へ向かった。

11月2日、午後2時、名刺の住所に到着した。
大阪駅から南西2キロの地点であった。
    
淀第一不動産株式会社は、国道2号線沿いの雑居ビルの4階に入居していた。
     
岩田は、車を近くの駐車場に駐め、目的のビルに向い、歩き出した。

(気持ち良い!)
心地良い、涼しい風が吹いていた。

(月が変わると、気候も変わるものだな)
大阪の10月は、夏であった。

(大阪経済が低迷している原因の一つは、夏の暑さと言われているが、まさにそのとおりだ)

大阪は、4月から10月までが『夏』であった。
特に7月から9月は、猛烈に暑い。

誰れもが、クーラーの効いた室内に居て、外出を控える。
外へ出れば、熱中症の危険がある。
     
市民が外出を控えれば、経済が低迷するのも、当然であった。
      
「岩田さん!」

聞き慣れた声であった。
丁度、目的の雑居ビルの前に着ていた。

振り返ると、大阪府警の畠山警部補がいた。
      
「一人?」
他に刑事は見当たらなかった。

「ええ。この方が気楽ですから」
そう軽く受け流したあと、畠山警部補が尋ねた。
   
「あそこですか?」
      
畠山警部補の視線は、隣のビルを指した。
ガラス張り、12階建ての豪華な建物で、掲げられた看板は梅田片山建設となっていた。
      
(梅田片山建設!)
木下藤吉郎後援会会長・片山豪太郎が、一代で作り上げた会社である。

「中堅建設会社だと聞いていたが、結構、いい建物だな」

「ええ。評判のいい会社のようです。仕事も確実だし、経営状態も問題ありません」

 
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