畠山警部補の説明は、インターネットで得た情報と同じであった。
「別名、タヌキと呼ばれているようだな。木下藤吉郎の後援会長をしているはずだが?」
「はい。業界では、木下藤吉郎が知事になれば、府の事業は片山豪太郎が仕切ることになるとされています」
「もっとも大手の多くは、片山豪太郎が仕切ることに反対。現知事の支持に回っています」
「今日は、片山豪太郎の調査にきたわけですね?」
畠山警部補が岩田に尋ねた。
「いや。こっちの雑居ビルの方だ」
「このビルのオーナーも梅田片山建設。入居している会社も、すべて関連会社です」
「淀第一不動産も、そうなのか?」
「ええ。梅田片山建設の子会社です。社長の中館さんを訪ねて来たわけですね。一緒にどうですか?」
(どういうことだ?)
「会いに来たわけでは…」
岩田が困惑した顏で応えた。
「中館さんをご存知ないのですか?」
畠山警部補が不思議そうな顏で、岩田に尋ねた。
「知らない…」
「中館誠、62歳。元住吉西署の署長で、現在、梅田片山建設顧問兼、子会社の淀第一不動産社長」
畠山警部補が頭をかきながら、小さな声で伝えた。
警察署長が建設会社に天下り。用心棒をしているわけである。
警察では、よくあるパターン。
「大阪府警の先輩ということか…」
岩田が、ため息まじりに呟いた。
「私にとっては、昔の上司なんです。駆け出しの頃の…」
畠山警部補が小さな声で告白した。
(なるほど、畠山らしい)
(今回の事件に、中館先輩が関わっている可能性もある。一対一で腹を割って、捜査協力を求めるつもりか)
(だが、警察署長まで登った連中は、タヌキやキツネが多い。一筋縄ではいくまい。畠山のお手並み拝見だな)
「捜査の邪魔をしたくない。ここで失礼するよ」
(畠山のおかげで、淀第一不動産と中館社長の情報を得ることができた)
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