「ちょうど良かった。受付にいる右から2番目、梅田片山建設の片山社長だね?」
岩田が山口圭子に尋ねた。
「ええ」
笑いながら、山口圭子が答えた。
「その左が中京総合ツーリストの植芝会長?」
「ええ。そのとおりです」
植芝会長と片山社長は、ホームページに顏写真が公表されている。
片山社長は、狂暴なツキノワグマに見えた。
大きな体と日焼けした肌。さらに黒のスーツに白のYシャツ、淡い色のネクタイ。
タヌキと言われているのは、性格を指しているようであった。
植芝会長は、白髪でスマートな体型。
歳老いた学者という雰囲気であった。
キツネと呼ばれる、巧妙さやずるさは容姿から消えていた。
(問題は、加美秘書室長と立石浩一)
喫茶店のマスターの話では、この2人が選挙対策を担当している。
(受付周辺にいるはず)
岩田はそう考えた。
「圭子ちゃん。加美秘書室長と立石さん、どこにいるかわかる?」
「植芝会長の左にいるのが加美秘書室長。さらにその左が立石さんです」
山口圭子がさらりと答えた。
彼女は、この2人をよく知っているようであった。
加美秘書室長と立石浩一は、共に中肉中背のサラリーマン。
(いかにも切れものという感じだな。秘書室長も立石浩一も)
岩田の第一印象であった。
「紹介しましょうか?」
山口圭子がうれしそうに尋ねた。
「いや、いい」
岩田が即答した。
「お仲間の方も、お見えになられていますよ」
山口圭子が苦笑しながら、言った。
「?」
岩田が目で、山口圭子に尋ねた。
「片山社長の後ろに立っている方、元大阪府警の中館さんです」
山口圭子が静かに答えた。
(この男が、中館か…)
身長は170センチ位。少し腹が出ていて、太り気味。
鋭い目とスキのない身のこなしが、何者であったかを物語っていた。
(畠山は説得できただろうか)
今日の午後、捜査協力を求めて、畠山警部補が訪ねたはずである。
その結果がどうであったのか、中舘の表情からは読み取れなかった。
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大阪市中央公会堂(中之島) |
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