岩田と山口圭子は、近くの喫茶店に入った。
店内に客は無く、話をするには好都合であった。
「加美秘書室長と立石浩一について、教えて欲しいのだが」
レモンティーとチーズケーキを注文したあと、岩田が頼んだ。
山口圭子がカバンから、システム手帳を取り出した。
「七洋電子機械工業・秘書室長、加美祐司、45歳。生まれも育ちも大阪です」
「現在、豊中市在住。家族は妻と子供が2人」
「大学卒業後、機械を専門とする商社に入社。でも、すぐに倒産しました」
「その後、上司だった木下藤吉郎と新しく商社を立ち上げた。それが七洋電子機械工業」
山口圭子が、暗記しているように説明した。
「立石浩一、27歳、独身」
次に、山口圭子は立石について、説明を始めた。
「家族は母と妹。高校卒業後、七洋電子機械工業に入社。現在、秘書室勤務です」
「生まれも育ちも大阪ですが、和歌山と接する田舎町、と言っていました」
「実家から通勤した場合、片道2時間。そのため、大阪市内のマンションで一人暮らしをしています」
「10月22日の岐阜のパーティ、出席した?」
岩田の質問が、木下藤吉郎のパーティに移った。
「岐阜には別の仕事のため、行けなくて…」
山口圭子が、すまなそうに応えた。
「10月24日の名古屋で開催されたパーティは?」
10月24日は、和田かつ也が有馬温泉の鼓ヶ滝公園で殺害された日である。
殺害時刻は、午後7時から9時の間。
「出席しました」
「何か変ったことは?」
「先日、畠山警部補から同じ質問を受けました」
苦笑しながら、山口圭子が説明を始めた。
|
|
|
|