しばらく考えたあと、同じテーブルに着席した。
酒を推めた。男の顔が少しおだやかになった。
「あなたは本当に記者の方ですか?」
「ええ。サイトの管理人も務めています」
「あ、結構人気のあるウェブサイトよ〜。おもしろい情報がいっぱい載っていて。優子もよくアクセスするんで〜す」
うまく合わせてくれた。サイトに「おもしろい情報」などは無かった。
「そうなんですか…」
警察または探偵、そのように思っていたようだ。それはそれで正解であった。
「ネット上には、木下社長の話が山のように出ています。御存知でしょうか?」
静かに質問を始めた。
「少しだけ」
「支持が多数ですが、掲示板には反対する意見も書き込まれています。それがどうも身内のようです。このままじゃ、うちの会社は倒産。こんな感じの書き込みです」
「失礼ですが、元からの社員ですか、それとも選挙スタッフとして採用された方ですか?」
営業部のエースであったことはすでに知っている。話の取っ掛かりを作るための質問であった。
「半年前までは営業にいました」
「では、知事選出馬に反対ですか?」
「反対です。正直、何を考えているのか、わかりませんね」
キッパリと言った。
「このままでは大阪が終わってしまう。それはよくわかります。だからと言って、出馬することはない。今の状況では…」
「きびしいですか?」
「うちの会社は大阪の機械商社です。でも、大阪ではまったく機械が売れていません。笑い話のような事実です。取り引きの大半は海外と東海地区。業界では名古屋の会社と言われています」
真顔であった。
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